『絵が先』シリーズ第三弾。
少年が聴くのは過去か、未来か、あるいは幻か――……
四人の書き手によって紡ぎ出される四通りの物語。
貴方にも聴こえますか?
【立ち読みサンプル】
少年再構築 有川憂
家の角を曲がった所で、ガラクタの積み上げられた空き地に裸足で立つ少年がいた。腐って縫い目の解けた畳の上、躍るように目を閉じて両手を広げる。
「リコンストラクション!」
凛と声を放つと、足元のガラクタが舞い上がり花や木が実像へ透明に重なり浮かんでいく。
「そう。ここへ帰りたかったんだ?」
その言葉に反応したように木造家屋が再現され、中から白髪の老婦人が笑い泣きで飛び出して来た。学生服に褞袍という少年の背中から、すっと白髪の老人が現れた。
【続きは本編で!】
竹の子書房ならでは、「絵が先」シリーズの第三弾。
柔らかな色崎さんの絵を元に、淡く優しい物語が語られる。
懐かしいような、甘酸っぱいようなお話が多いのが印象的です。
個人的には絵を見て、お話を読み、
最後にもう一度絵を見ていただきたい。
「絵が先」シリーズの醍醐味がそこにあります。
表紙の、一人の少年から連想された四つの物語は、全く、別々の世界の物語です。
しかし、どれもが優しい物語です。個々に加味された「甘さ」や「苦さ」はありますが
根底に流れるものは、とても優しい。そう感じました。
少年の表情が、これらの物語を誘い出しているのかもしれません。