引き裂き曲馬団

「あらかじめ引き裂かれていた、少年と少女の物語」 少年の語る異国の童話が、少女の心を慰めた。 少女の宝物のラムネ玉が、少年の好奇心を擽った。 ――蚊帳の外から覗きたる、叶わぬ恋は蜜の味。   ・目次 第壱幕 初 […]

書誌情報

(編著)黒実操

  • 装画:酒井康彰
  • ページ数:100
  • 価格:250円
  • ファイル形式:mobi
  • 発行日:2016/07/13
  • 改訂日:2016/07/13

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「あらかじめ引き裂かれていた、少年と少女の物語」

少年の語る異国の童話が、少女の心を慰めた。
少女の宝物のラムネ玉が、少年の好奇心を擽った。

――蚊帳の外から覗きたる、叶わぬ恋は蜜の味。

 

・目次
第壱幕 初戀
第弐幕 金色夜叉
第参幕 ジェントル曲馬団
終幕 悲しき玩具

【立ち読みサンプル】

「お坊ちゃま、もうあの曲馬団はご覧になって?」
少女の仕草も物言いも、惨めな身形からは程遠く、まるで名家の令嬢のようである。少女の母も物腰の優しい、礼儀を弁えた女性だった。
「あの家も、世が世ならってとこだろうに。いい恥さらしだ」
父親が吐き捨てるように言ったことを、惣一は覚えている。
「――あの、お坊ちゃま?」
「あ、ああ、うん。……そのお坊ちゃまってのは、やめてくれる約束だったろ?」
「ごめんなさいね。母がどうしても許してくれないのよ」
「ぼくはイヤなんだけどな。でも、お母さんの言いつけなら仕方がないね。で、何の話だっけ?」
惣一は、少女に向き直る。
「ほら、ジェントル曲馬団よ。三丁目の更地に来てるの。でもね、明日でサヨナラって聞いたわ。小さなテントだけど、ナイフ投げがとても素敵なんですって。お婆さんが目隠しをして投げるそうよ」
「へー、お婆さんが」
「それにね、道化が女の子なんですって。――なんでもね、首が、三つもあるの」

【……続きは本編で!】

・著者プロフィール
お話・黒実操(くろみみさお)
怖いお話、不思議なお話、綺麗なお話、醜いお話、幸せを求めて得る人間やそれに破れてしまう人間のお話などを書く幻想者。
読者公募ホラー小説企画傑作選『怪集 蠱毒』(竹書房文庫)に入選作「ムしイチザの話」収録。
共著既刊に『怪異伝説ダレカラキイタ?』シリーズ、学校の怖すぎる話 (1)『人体模型に近づくな!』(共にあかね書房)
電子書籍サイト竹の子書房に所属。

絵・酒井康彰(さかいやすあき)
イラストレーター・キャラクターデザイナー。
美から醜、デフォルメからリアルを自在にこなす、多彩な筆の持ち主である変化者。
人物・モンスター・マスコットのデザイン、様々なタッチでのイラストを得意とし、商品パッケージ・玩具・ゲーム・映像・似顔絵などジャンル・媒体問わず活動中。
一方で、因果か定めか、怪奇・暗黒・猟奇的な世界に魅了されており、その表現の場を探し求めている。
ホラーコミック『レザレクション』主催者。

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