昼は楽しき曲馬団、夜は惑わし幻夢団。少年探偵が見るのは、夢か現か?
黒実操が贈る、幻想小説の傑作がついに発行!
●ちょっと立ち読み!
『第壱幕 スマヰルお千代は何故死んだ』
ツラヌキお巻の金切り声が、暁に響く。
真っ先に駆け付けた馬夫人が見たものは、嗚呼無残、スマヰルお千代の哀れな骸。
「お千代、お千代なのかい。何故返事をしないんだい」
四つん這いで手探るお巻を、馬夫人が抱き留めた。
「お巻さん、落ち着いて聞いとくれ。お千代は死んでいる。口から、ああ酷い血だ。……何か聞こえなかったのかい」
馬夫人の問いに、お巻は頭を振るのみ。
待っておりました。この本が電子本の形になるのを、ずっと。
さて、内容に触れるという無粋なことはいたしますまい。中が知りたければ、どうぞお読み下さいませ。
躊躇していらっしゃる方はどうぞ、お手に取っていただきたい。……なにせ、ただですので^^;
黒実さんの作品には一貫してある種の『闇』がございます。言うなれば、高度成長と共に置いて来たどこか懐かしい『昭和の闇』とでも申しましょうか。
古き良き、と昭和生まれの方は言うかも知れません。
昭和を知らぬ方にも覚えがあるかも知れません。
どこか先の見通せぬ仄暗い、しかし決して捨てられぬ、温かなものと繋がる『闇』。それは誰もが、どうしてだか知っている『闇』です。
こう聞いて、身の裡から湧き上がるものを覚える方。
どうぞ、是非お読み下さいませ。なぁに、期待は裏切りません。最後のページを読み終え、満足の溜息を吐くこと請け合いでございますから。
竹の子書房ラノベ課が誇る女流作家・黒実操の最新刊!
これを読まずして、何を読め俺の嫁という感じです!
本書には旧書体・旧文体・旧カナ使いなどが所狭しと詰め込まれ、かなりの読書力を要求されます。正直、こういう文体での商業出版はありえません。
竹の子書房だからこそ! 竹の子書房だからこそ出せた本です!
……そこんとこ重要です。大事なことなので二回言いました。
また、本書のタイトルが示しておりますように本書には『嘘』が溢れております。魅惑的なキャラクターたちが嘘をつき、また時に嘘に紛れさせた真実を語る展開。
さらに黒実操ならではの近世的世界観が、嘘と真実の狭間に不安定さを演出しているのです。
とても面白い本です。最上級の賛辞を差し上げたい。
あなた、この表紙に見覚えは?
手あかのついた学級文庫や、ストオヴのたかれた図書室で、過ぎし日に見たあの本とそっくりでしょう?
まずは読んでみた、というあなた。
寄木細工の箱は開きましたか?それはおめでとう。
でもその箱は、二重底かもしれないわね。
さあ、もう一度ページをめくってみて。
今度は違う答えが、見つかるかもしれませんよ?
待ちに待った黒実操さんの「嘘つき曲馬団」。
この日をずっとずっと待っていました。
個性たっぷりの登場キャラクターと黒実ワールドにきっと夢中になることでしょう。
旧字で書かれているにも関わらず、読むことを飽きさせないのは、各章ごとに追加されるキャラクターの描写が素晴らしく、テンポ良く進んでいく魅力的なストーリーがあるからでしょう。
更に、各章ごとにキャラクターの挿絵が入ることで感情移入もしやすく、あっという間に読み終えること間違いなし。
素晴らしい作品を提供してくださった、著者の黒実操さん、表紙のサデスパー堀野さんを始めとした絵師の皆様、校正課/組版課の皆様に感謝致します。
これは、乱歩の再来でしょうか。一寸法師が踊り、押し絵を愛する男が嫉妬に狂い、屋根裏を痩せた男が歩き回る、カストリ雑誌がはびこるあの時代を思い起こさせる書き方、内容。人間とはまさにサーカスの中に紛れ込んだ、ロビンソンクルーソーかもしれない。
次々と紡ぎ出される妖しき世界、その虚実入り乱れる迷宮を潜り抜けた先にある真実……。特異な雰囲気の中を読み耽るうちに、気付くと、周囲が闇のとばりに包まれているといった印象を持った。しかも読了後も、その闇が消え去らない。
この『嘘つき曲馬団』にはなぜか「奇術師」が存在しない。しかし間違いなく「奇術師」はこの作品に顔を出してくる。そして観客である読者を罠に陥れる。……私が読み得た真実とはもしや作者が仕掛けた罠ではと、戦慄を覚えるのである。ストーリー自体の謎と共に、この作品そのものがトラップと化しているところに、面白味を感じる次第である。
この作品は、乱歩・久作等へのオマージュと思しき世界を呈しながら、其の実、一筋縄ではいかないトリッキーな実験的構成で、純な古色蒼然の様相とは一線を画する部分も持っていると言える。単なる懐古趣味ではない、むしろその裏で密やかに蠢く作者の挑戦にこそ、この作品の最も美しく輝く部分があると思う。
繋げられた糸は、果たして本当に一本の糸なのか。置かれた箱の蓋と底は、果たして本当に正しく位置しているのか。……それは自身の目で確かめるしか術はなかろう。
遅ればせながら感想など。
決して長い物語ではなく、あれこれと説明をしているわけでもない。あくまで少年向けの冒険譚の体裁であるのに、妖艶にして濃密、ゆるぎない黒実ワールドに頭まで浸れる一冊です。
絵師さんたちが「我も我も!」と参加を表明した理由が行間から滲んでいるのを感じました。
装幀もとても素敵でした。商業の文庫本などではなかなかできないであろう「その物語らしさ」の表現は、電子書籍が電子書籍であることの大きな意味なのかも……と思ったりも。そしてその「作り込み」を活かすのはやっぱり骨太な世界観なのですね。
初めまして!
竹の子書房には何度も小説や怖い話を読みに来ていますが、コメントを残すのは初めてとなります。
とても面白い作品で、何度も読み入ってしまいました。
世界観が、独特で、お話の内容を理解するのに、何回か読み返しました。でも、惹きつけられるものがあり、ストーリーを掴めた今も、また読みたいなって思っています。
また続編が読めたら嬉しいです。
また、同じキャラクターを、何人ものイラストレーターで描かれているのも、とても楽しく観させていただきました。それぞれ個性があり、妖しい世界を垣間見ることができました。
竹の子書房さんは、思う存分それぞれの持ち味を発揮されていて、とても素敵な場所だと思います。いつも楽しませていただきありがとうございます。
一つの作品を送り出すということは、それぞれに大変な事と存じますが、これからも、素敵な作品との出会いの場として、楽しみにしています。影ながら応援しています。
anne
読み手として、そして描き手として、作品を愛するという事を改めて教えてくれた作品です。
この作品に出会い、読み終えた瞬間、
僕は完全にこの作品の、この作者の虜となっていました。
気がつけば筆を取り、この作品を描いていた。
何枚も何枚も。
表現せずにはいられなかった。
その中から一枚選び、仕上げ、電子書籍化に挿絵にて
参加するに至った。
僕にとって、竹の子書房に参加できた初めての瞬間でもあった。
こんなに嬉しい事はない。
しかし、どうしたことか。
この作品を描きたいという欲求は、止まる所を知らないのです。
僕はこれからも描き続けます、この作品を。