絵が先 Call me

雨の棺に閉じ込められた恋心を、僕はけして忘れはしない。 けれど赦されるなら、あのひとと同じように僕を呼んで……。 今はまだ囚われているこの想いを、いつの日か君に捧げるから。   ●ちょっと立ち読み! 「観月、答 […]

書誌情報

(編著)芳賀沼さら もりか

  • 装画:芳賀沼さら
  • ページ数:71
  • 価格:無料
  • ファイル形式:PDF
  • 発行日:2012/02/19
  • 改訂日:2012/02/19

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雨の棺に閉じ込められた恋心を、僕はけして忘れはしない。

けれど赦されるなら、あのひとと同じように僕を呼んで……。

今はまだ囚われているこの想いを、いつの日か君に捧げるから。

 

●ちょっと立ち読み!

「観月、答えて」

呼ばれる名前がまるで呪文のようだ。

答えることは苦痛なのに、それすら越えて従いたい。

「考えたこと、ない」

言葉を繕うことはできなかった。

僕の中にある真実を声に乗せることだけで、どんな誤魔化しも利かない。

「だったら、……俺としてみる?」

進藤の声が身体の深い所を抉ったような気がする。

吐息さえ感じるほど近い所から落とされた質問に、喘ぐように頷くだけで精一杯だった。

進藤の指が探るように僕の唇に触れる。

振り向くように促され、考える間もなく唇が重なった。

どうすればいいのか分からずに固く閉じたままの唇をあやすように上、それから下と啄まれる。

胸の前でぎゅっと握り締めた拳を、少し強引に開かせて、進藤が指を絡めてきた。

湿った、僕よりも高い体温の手が存在を主張する。

それはまるで、お前の前にいるのは俺だと言い聞かせているように思える。

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