何気ない日常の隙間に、忍び寄る影。
理由も、原因もわからなくとも、「それ」はある日突然に――
著者、蒼弥氏が経験した不可思議な事象をまとめた、実話怪談シリーズ第一巻。
【立ち読みサンプル】
一話目 赤いランドセル
私が不思議な体験をし始めたのは、中学三年の頃からでした。それまでは不思議な経験など、まったくしたことがなかったのです。
中学のとき、私は二種類の方法で通学していました。
一つは大通りを通り正門から入るルート。
もう一つは脇道を使い校門から入るルートです。
文化部だった私は、友達と一緒に帰るのはごく稀で、いつも一人で帰っていました。初めて不思議な体験をしたその日も、一人で帰る途中でした。
修学旅行も間近に迫ってきた、そんなある日のことです。私は正門からのルートを使って家に帰ることにしました。
【続きは本編で!】
霊というものが、「見える人」と「見えない人」がいます。
見える場合でも季節や温度や湿度や、その他の要因で見えたり見えなかったりします。
他人には見えないのだから、語ってもなかなか理解して貰えません。
だから、自分だけが見えているというのはツラいのです。
苦しいのです。
おそらく、霊のほうもそうなのでしょう。
ツラいのでしょう。苦しいのでしょう。
ですが、生死で分かたれた溝を超えて生者の我々がしてやれることはなし――。
救ってあげられないのだから、来られても困ります。
それでも彼らはやってきます。
安息の場である家まで、家庭まで――。
そういう恐怖を、本作は語ってくれます。
竹の子書房の怪談、お値段は無料です。
まず、表紙に見入りました。
装幀も含めて、このお作品の「得体の知れなさ」「薄気味悪さ」が美しく描かれていると
感じます。
これは著者さまが体験された、実話怪談集です。
因果や理由は判らない、だけど体験していらっしゃる著者さまにだけは、
ソレははっきりと体感され、ときには実害も降りかかっているのです。
いつなんどき、これらが自分の元にも訪れるかも知れないという怖さがありました。
実話というか、体験されたことだけが綴られた怪談です。
読んだ後、思わず後ろを振り返ってしまいそうになりました。
今まで勘違いだと思っていたことは、もしかしたら。
そう考えてしまう1冊です。