「私が死んだら、啓ちゃんに解剖をしてほしいの」
不治の病に冒された心臓外科医である妻は、解剖医の夫に全てを託した――
青山藍明が描く本格ホラー作品。
【立ち読みサンプル】
突発性心筋裂、別名『蘭裂病』。
心臓の壁を構成する筋肉、心筋に原因不明の亀裂が発生し、やがて蘭の花のように裂けてしまうので、この名が付いたという。
効果的な外科処置も見つかっておらず、服薬で亀裂の進行を抑制する事もできない。いわば、発病した者は心臓が裂け、死を待つ以外に道はないという難病なのだ。
僕、笠原啓太の妻、アキがこの恐ろしい病に冒されている、と知ったのは結婚して五度目の春を迎えようとしていた頃である。
【続きは本編で!】
「仙履蘭の妻」は、根底を流れる究極の夫婦愛の物語。
それも良いけれど、がつんと来たのは「咒書」のほう。
もう、久々に腹にこたえる話でございました。
堪能させて戴きましたよ、ええ、もうがっつりと。
この、どろっどろに救いの無いのが良いねぇ。
大好物、ど真ん中でした。
ご馳走さまでした!
ありがとうございます。咒書の救いようなさ、書いててニヤニヤしていた自分は当時どSだったようです。
仙履蘭の妻は、まだこう恋だの愛だのにこだわって怪談を書いていた時のもの。
対極な作品、楽しんでいただけてこちらこそ嬉しく思います。
ずっしりと重みのある二作品。
物語は怪異を軸としているのだが、直線的な怪異は感じさせない。
真綿で首を絞めるが如く、じわりじわりと迫ってくるおぞましさ。
しかし二作品に共通する不安感の正体は、怪異そのものよりも醜い人間の欲そのものだ。
何度も過ちを正す機会は与えられたのに。
正しい行いとは何なのか、考える必要すらないほどわかっていたはずなのに。
欲や嫉妬が正しい道を覆い隠す。
そして道を踏み外した者に、ふさわしい末路が用意されるのだ。
青山藍明という作家は、己の作中に生きるキャラクターにふさわしい末路を用意した。
徹底的で、残虐で、容赦のない。
美しい者には花束を、そうでない者には苦痛と憐れみを。
誰に花束が与えられたのか、その答えを是非読者の方々に探して頂きたいと思う。
ありがとうございます。咒書を書いていた当時、実はちょっと色々あって、人間の欲について深く考える時期がありました。
飲み込まれてしまう人間はどうなるのか、間違っている、それを直す機会があったにもかかわらず、全てを周りのせいにして、自分を正当化するときどのような末路が待ち構えているのか、等を考えていたら黒い作品になってしまいました。
容赦ないほど、救いようないほど痛めつけていたことは、当時悩んでいた事が影響していたのだろうと思います。
そして、少し踏み外せば自分もこの強慾に呑まれた登場人物のようになってしまうということも。気付いていても見ようとせず、やがて迫ってくる怖さ。
気付いて頂き、ありがとうございました。
ちなみに1作品目はかなり適当なんです、あれは皆様のご想像にお任せします、と投げている気持ちが強いかもしれません。
「読んでいる」という感覚がなかったです。物語に没入してしまいました。
読了後、クリックする指にチカラが入っていたのでしょう。軽く痺れていました。
それくらい、どっぷりと浸りました。
『仙履蘭の妻』では啓太に同化しました。何通りもの解釈を赦していただけるような、深さを感じるラスト…余韻の素晴らしさ。生々しさと幻想との融合が、とても好みでした。
『咒書』はもう、ナチュラルに島谷さんに同化しました。どん引きされるのは覚悟のうえですが
こういう感情も物の考え方も、知らないとは申しません。
だからこそ、自分の中の暗黒面が物語の中で同時に粛清されるような快感を味わいました。
ありがとうございます。島谷に同化する気持ちは、誰にでもあると思います。支配したい、新しいものは排除したい、自分が神のごとくおさまりたい、という人間の強慾。
啓太のほうが実は適当です、ふふふ。あの作品は読み手で様々なとらえかたがあるようで、書いた自分が一番驚いております。う~ん、そういうもんなのですね。
どっぷりと浸ってくださったとのこと、書き手冥利でございます。これからも精進します。
また浸れる作品を、痺れる感覚さえ忘れる作品を書いていけたらいいなと思う所存です。
暗黒=怪、その流れを如何に表現するかで悩んだ部分もありますが、後悔のない作品をしあげたい気持ちはいつまでも大切にしていきたいですね。
ご感想、心より感謝いたします。
なんだかドラマを見ているような感覚で読ませていただきました。
私もクリックする手が止まりませんでした!
アキの愛の深さに感動です。。。
『咒書』の方は普通にオムニバスの怪談本に載ってておかしくない、というか寧ろここで無料で出しちゃっていいんですか!←みたいなww
現実的な怖さと呪詛的な怖さとがねちっこく書かれていて、すごく面白かったです!!!
アラサーな私にとっては←2人のどちらの気持ちも分かるような気がしました。
でもやっぱり「あなたですよね」の瞬間は痛快かなぁ〜w
ありがとうございます。ご感想、心より感謝です。
咒書は同じ世代としてリアルに書いてみました。実際、三十代にさしかかると、若い社員との溝や外見への困惑も現れてきます。年を重ねて、聡明に美しくありたいという希望の反面、嫉妬に踊らされて滅してしまいのもまた人間の愚かな部分になるのでしょう。女という生き物の権力誇示、狭い世界の中で作られるヒエラルキー、それらが絡まり合い、怖さを生む。
一番怖いのは、あの話は、人間なんです。
「あなたですね」は、そこで胸がすくけれど、あとにもっと救いようのない展開を広げる、ポイントみたいになっているのかもしれません。
また、仙履蘭の妻では愛情と医学、ここでもうやはり自己顕示欲(朝倉の)が出てくる箇所がございます。しかし愛情の深さには勝てない、愛情は無償だから。。。
「無料で出しちゃって~」というお言葉、もったいないです。
まだまだ未熟です。
この本は皆様に助けて頂き、生まれた我が子。
可愛がって頂けると幸いです。
すごい、素晴らしい。これ以上の言葉が見つかりません。すっかり虜になりました。
仙履蘭の妻では、アキへの愛情と社会的地位との間で、どちらも成し遂げられず堕ちてしまう朝倉と、一見とても綺麗だけど淡々としすぎて非現実的な印象の啓太の両極を楽しめる事ができました。
咒書は、「ある、あるんだけど、それに支配されたら人として終わる」
そんな、日頃は目を背けている事が克明に記され、表現されています。
真正面から向かい合いたくない女の醜い感情を表現されており、正直目を背けたくなりました。
しかし、取り憑かれたかのように読んでしまうのは、藍明さんの筆力、才能、これに尽きます。
救いようのないラストでしたが、読んだ後はたっぷりの読了感と清々しさが残ります。
素晴らしい作品でした。
ありがとうございます。咒書は「ある、あるんだけど、それに支配されたら人として終わる」がすごく痛感させられる出来事がおおく、その殆どが女性により織り成される事実が怖かったこと、そして実際に目の当たりにしているのではないだろうかと思われる状況だと感じました。
書いていて実際体調を崩す、腸炎を発症する等の弊害もありましたが、自分のいやでいやで堪らないことを記せたことに後悔はございません。
この醜い感情は自分も抱く確立がないとはいえないものということも、書いていて改めて気付いた部分でもあります。実際、この心情はホラーで書いた小説「百目」にも活かされたと感じております。
一方、自己のゆがんだ愛情と権力に飲み込まれた朝倉、純粋に追い求め、逆に淡々としてしまった啓太の非現実は書き始めということもあり、まだまだ固め方が足りなかった部分かなと考えてしまいました。
読了感、すがすがしさ、どろどろっぷり、感じ取っていただき感謝です。
本当にありがとうございます。
虜になりました、など私の作品はまだまだ未熟です。これからも精進しますので、楽しみにしていただけましたら嬉しいです。